SaaS(Software as a Service)のビジネスを成功させるためには、いくつかの重要な指標を理解しておく必要があります。「LTV」や「ARR」といったアルファベット3文字の言葉が飛び交い、最初は何が何だか分からないかもしれません。でも大丈夫!この記事では、それぞれの指標をフレンドリーに解説し、「どの部門が特に意識すべきか」までカバーします。
1. LTV(顧客生涯価値)
意味:
顧客がサービスを利用する間に企業にもたらす総利益のこと。
- 長く使ってくれる顧客ほどLTVが高くなる。
- 顧客1人あたりから得られる収益を最大化することが重要。
例え話:
LTVは、お店に通い続ける常連さんからの売上に例えられます。例えば、カフェに毎月1,000円使うお客さんが10年通い続けると、その人から得られる総売上は12万円。これがその人のLTVです!
方程式:
LTV = ARPU × 平均契約期間(継続月数)
- ARPU(Average Revenue Per User):1ユーザーあたりの月間売上。
誰が気にするべき?
- マーケター: CPA(後述)とのバランスをチェック。
- 営業: 高LTV顧客を優先的にアプローチ。
関連キーワード:
- Churn Rate(解約率): LTVに影響する。低いほどLTVが上がる。
- 方程式: 解約顧客数 ÷ 総顧客数
- Retention Rate(継続率): 解約率の反対概念。
- 方程式: 1 – Churn Rate
2. ARR(年間経常収益)
意味:
年間ベースで見た定期収益。
- 月次契約でも年間契約でも、すべてを1年間で換算して計算。
- SaaSの成長性を測るための基準。
例え話:
ARRは、月謝制の習い事の年間収益に似ています。例えば、ピアノ教室が月1万円の生徒を10人抱えていると、月の収益は10万円。これを12ヶ月分で計算すると、ARRは120万円です。
方程式:
ARR = MRR × 12
- MRR(後述)を12倍するだけ。
誰が気にするべき?
- 営業: ARRの成長率でパフォーマンスを評価される。
- 経営陣: SaaSビジネス全体の健康度を把握する。
関連キーワード:
- Net ARR: 解約(Churn)を差し引いた後のARR。
- 方程式: ARR – Churned ARR
3. MRR(月間経常収益)
意味:
月次ベースで得られる定期的な収益。
- SaaSの収益を安定的に計測するための基本単位。
- キャンペーンやプロモーションの影響を短期間で確認できる。
例え話:
MRRは、月ごとの家賃収入に似ています。例えば、不動産オーナーが5万円のアパートを3部屋貸し出している場合、月の収入は15万円(これがMRR)です。
方程式:
MRR = (月額料金) × (契約顧客数)
誰が気にするべき?
- 営業: 新規契約やアップセルがMRRにどう影響するかを分析。
- マーケター: キャンペーン後のMRR増加を追跡。
関連キーワード:
- Expansion MRR: 既存顧客の追加購入やアップグレードによるMRR増加分。
- 方程式: 増加分のMRR
- Churned MRR: 解約やダウングレードによるMRR減少分。
- 方程式: 減少分のMRR
4. CPA(顧客獲得コスト)
意味:
新規顧客を獲得するためのコスト。
- 広告費、営業費用、キャンペーン費などを含む。
- LTVがCPAを上回ることが健全なビジネスの条件。
例え話:
CPAは、1人のお客さんをお店に連れてくるための広告チラシの印刷費に例えられます。例えば、1,000円分のチラシを配って10人が来店した場合、1人あたりのCPAは100円です。
方程式:
CPA = (マーケティング費用 + 営業費用) ÷ (獲得顧客数)
誰が気にするべき?
- マーケター: 費用対効果(ROI)を測る基準。
- 営業: 獲得コストを考慮した効率的なアプローチを設計。
関連キーワード:
- CAC(Customer Acquisition Cost): CPAとほぼ同義。
- 方程式: 総顧客獲得費用 ÷ 獲得顧客数
- ROI(Return on Investment): CPAとLTVのバランスを評価する指標。
- 方程式: (LTV – CPA) ÷ CPA
5. ユニットエコノミクス
意味:
1つの「単位(顧客や契約)」がもたらす経済的価値。
- SaaSの収益性を評価するための概念。
- LTVがCPAを上回るかを判断する指標。
例え話:
ユニットエコノミクスは、野菜の1袋あたりの利益に似ています。例えば、1袋100円で仕入れた野菜を150円で売ると、1袋あたりの利益は50円(LTV > CPA)。逆に、100円で仕入れて90円で売ると赤字です。
方程式:
ユニットエコノミクス = LTV ÷ CPA
- この値が1を上回ることが望ましい。
誰が気にするべき?
- 経営陣: ビジネスモデル全体の収益性を把握。
- マーケター & 営業: 獲得効率と収益性のバランスを取る。
関連キーワード:
- Break-even Point(損益分岐点): ユニットエコノミクスが1を下回る場合、修正が必要。
- 方程式: 総固定費 ÷ (1顧客あたりの平均利益)
関連指標でさらに理解を深める
Churn Rate(解約率)
- 顧客が一定期間内にサービスを解約する割合。
- 方程式: 解約顧客数 ÷ 総顧客数
ARPU(1ユーザーあたりの平均収益)
- 方程式: 総収益 ÷ 契約ユーザー数
Retention Rate(継続率)
- 顧客が継続してサービスを使い続ける割合。
- 方程式: 1 – Churn Rate
まとめ
SaaSビジネスにおける指標は、マーケティング、営業、経営陣それぞれが気にするべきポイントが異なります。営業の現場では「MRR」「ARR」に注目し、マーケティングは「CPA」や「LTV」のバランスを追いかけることが重要です。
これらの指標を正しく理解して活用すれば、SaaSビジネスの成長を効果的に管理できます。必要な部分だけでも実践に役立ててみてください!
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