普段、何気なく飲んでいる清涼飲料水やエナジードリンク。その背後には、企業の熾烈なマーケティング戦略があります。今回は、コカ・コーラやレッドブル、そして日本独自の飲料市場におけるマーケティング戦略を紐解き、営業マンとして活かせるポイントを探っていきます。
コカ・コーラとアクエリアス:後発商品で市場を攻略する
1980年代、日本市場に進出したコカ・コーラは、日本初のスポーツドリンク「ポカリスエット」(大塚製薬)の成功に目をつけました。ポカリスエットは”体に必要なイオン補給”というコンセプトで大ヒット。
そこで、コカ・コーラは1983年に「アクエリアス」を投入。ポカリスエットを徹底的に研究し、あえて少し塩分控えめで飲みやすい味に調整しました。また、価格もやや低めに設定し、スポーツ施設や学校に積極的に販路を広げる戦略を取ったのです。
さらに、ポカリが”日常的な健康維持”を訴求する一方で、アクエリアスは”運動後の水分補給”にフォーカス。その結果、スポーツシーンでのポジションを確立し、市場でシェアを拡大していきました。
営業マンに活かすポイント:
- 後発商品でも差別化で勝てる。
- 競合の隙間を見つけて、そこに集中する。
レッドブル:すべてをマーケティング費用に
レッドブルは1987年、オーストリアで誕生したエナジードリンク。創業者のディートリヒ・マテシッツは、飲料の開発コストを最小限に抑え、その分をマーケティング費用に全投入しました。
特筆すべきは、広告手法の斬新さ。従来のテレビCMだけでなく、極限スポーツイベントのスポンサーやSNS映えするプロモーションを展開。「翼を授ける」というキャッチコピーとともに、エナジードリンクを”ただの飲料”から”挑戦と活力の象徴”に変えたのです。
日本市場でも、街頭で無料配布し「初めて飲む体験」を直接提供。コンビニの冷蔵棚では目立つ位置に陳列されるよう、流通業者へのアプローチも強化しました。
営業マンに活かすポイント:
- リソースは一点突破で使う。
- ブランドを体験として提供する。
100円マックの成功と失敗
マクドナルドは、コーヒーを100円で販売するキャンペーンを展開し、ビジネスマンを中心に大ヒットしました。低価格で手軽に購入できることが評価され、短期的には大成功を収めました。
しかし、マクドナルドの本来のターゲットである家族層が減少。客単価が大きく下がった結果、全体の収益が悪化するという中長期的な失敗を招いてしまいました。低価格戦略は一部の層には刺さりましたが、ブランドの方向性を見失う結果となったのです。
営業マンに活かすポイント:
- 短期的な成功と中長期的な影響を天秤にかける。
- ブランドの方向性をブレさせない戦略が重要。
コンビニコーヒーの成功:新たな顧客体験の創出
一方で、セブンイレブンやローソン、ファミリーマートといったコンビニエンスストアが展開した「コンビニコーヒー」は、成功事例として注目されています。これまで自動販売機や喫茶店でしか手に入らなかった美味しいコーヒーを、100円〜150円という手頃な価格で提供し、幅広い層に受け入れられました。
特にセブンイレブンの「セブンカフェ」は、淹れたてのコーヒーをセルフサービスで提供することで、コストを抑えつつも”手軽さ”と”本格的な味”を両立。これにより、働くビジネスマンや通勤途中の消費者の需要を取り込みました。
また、コンビニが持つ立地の強みを活かし、日常の”ついで買い”需要を喚起。さらに、SNSなどでの口コミ効果も相まって、”コンビニでも美味しいコーヒーが飲める”という新しい市場を作り上げました。
セブンカフェの成功の裏には、豆の品質管理や抽出方法への徹底したこだわりがありました。また、店舗ごとの在庫管理や廃棄リスクを軽減する仕組みも構築。これにより、安定したコスト管理と顧客満足の両立を実現したのです。
マクドナルドとセブンの違い:なぜ結果が分かれたのか?
マクドナルドの100円コーヒーとセブンカフェの大きな違いは、”誰をターゲットにしたか”と”商品提供の仕組み”にあります。
- ターゲットの明確さ マクドナルドは100円コーヒーでビジネスマンを取り込みましたが、従来のターゲットである家族層が離れ、客単価の低下が収益悪化に繋がりました。一方、セブンカフェはビジネスマンや通勤客にフォーカスし、日常の”ついで買い”という習慣を生み出しました。
- ビジネスモデルの最適化 マクドナルドはコーヒーを100円で提供する代わりに、追加注文や客単価アップが期待されていましたが、実際には低価格帯の商品購入に集中してしまいました。セブンはセルフサービスを採用し、コスト管理を徹底しながら、顧客が手軽に購入できる仕組みを作り上げました。
- 品質へのこだわり セブンカフェは豆の品質管理や抽出方法にこだわり、100円でも”本格的なコーヒー”を提供することで、ブランド価値を高めました。対して、マクドナルドはコスト削減が優先され、商品の品質面で差別化が難しくなっていました。
営業マンに活かすポイント:
- ターゲットの明確化と一貫した戦略。
- 提供の仕組みを最適化し、効率よく価値を提供する。
- 品質へのこだわりで顧客の信頼を得る。
日本茶飲料の競争:”健康”を軸にした戦略
ペットボトルの緑茶市場では、「伊右衛門」(サントリー)と「お〜いお茶」(伊藤園)が代表例です。ここで面白いのは、同じ”健康”を訴求しながらもアプローチが異なる点。
伊藤園は”茶葉本来の味”と”国産茶葉使用”を前面に押し出し、信頼感と品質をアピール。一方、サントリーの「伊右衛門」は、伝統文化をイメージさせる”京都の老舗”とのコラボレーションで、プレミアム感を演出しました。
両者は”健康”というキーワードでは一致していましたが、訴求する感情価値を差別化したのです。
営業マンに活かすポイント:
- 同じ価値でも伝え方を変えれば差別化できる。
- “信頼”と”プレミアム”のどちらを選ぶかで戦略が変わる。
まとめ:飲料から学ぶマーケティングの本質
清涼飲料水の成功事例は、どれも単なる商品開発に留まらず、競合との差別化や消費者心理の深掘りに基づいたものばかりです。営業マンとしても、
- 競合を分析し、自分の強みを再定義する。
- 一点突破でリソースを集中させる。
- 顧客が求める感情価値を届ける。
これらを実践することで、自分の仕事をもう一歩進化させることができるでしょう。次回飲み物を買うときには、その裏に隠された戦略を想像してみてください。それが、営業スキルの向上にもつながります!
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