枯れた技術は古くない
「枯れた技術の水平思考」と聞くと、“古臭い技術を無理に使う”という誤解を受けがちです。
しかし横井軍平さん(ゲーム&ウォッチ、ゲームボーイの生みの親)が語る「枯れた技術」とは、すでに完成され、安定して使える技術のこと。
横井さん自身、こう語っています。
「その技術が枯れるのを待つ。技術が普及すれば、どんどん値段が下がる。そこが狙い目だ」
電卓が10万円した時代に同じ構想を形にしても誰も買えなかった。
しかし量産効果で数千円まで落ちた時、同じ発想が「ゲーム&ウォッチ」として大ヒットに化けたのです。
つまり「枯れた技術」とは古さではなく、成熟した信頼性と手の届くコスト感を意味します。
イノベーションの主語は「アイデア」
では枯れた技術さえあればヒットは生まれるのでしょうか?
横井さんはむしろ逆で、「主語はアイデアだ」と言い切っています。
ソニーのウォークマンを例に挙げてこう話しています。
「ウォークマンはソニーにしか作れなかったか?そんなことはない。他社でも作れたはずだ。
ただ、ウォークマンという“アイデア”はソニーにしか出せなかった。」
要するに「イノベーション=技術」ではなく、「イノベーション=アイデア × 技術」なのです。
ここに横井流の本質があります。
ユーザーは「何を求めていないか」
ものづくりの現場では「ユーザーが欲しいもの」を突き詰めがちです。
しかし実際には、ユーザーが求めていないものを見極めることも同じくらい重要です。
たとえばゲームボーイ。当時はカラー液晶の技術がありました。
でも横井さんは「乾電池で10時間遊べること」を優先し、あえてモノクロを選んだ。
もし「流行りだからカラーにしよう」と考えていたら、携帯ゲーム機は成立しなかったでしょう。
マーケティングでも同じです。競合を意識して四象限にプロットするだけでは、顧客主語になっていません。
本当に必要なことは「顧客はこの機能を必要としない」と言い切れる理解の深さです。
アイデアは水平思考の組み合わせ
横井軍平が言う「水平思考」は、既存の技術を横にずらして新しい組み合わせを作ることです。
これをマーケティングの世界ではジェームス・W・ヤングが「アイデアのつくり方」でこう表現しています。
- 資料を集める
- 咀嚼する
- 無意識に任せる
- 突然のエウレカ
ヤングも横井も共通しているのは、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ」だということ。
実際、スマートニュースのクーポンチャンネルもニュースの延長線ではなく、「ニュース × キュレーション × 他業界の既存価値」の水平思考で生まれたと考えられます。
SaaSやものづくりにどう活かすか
- 新しい技術に飛びつく前に、安定した技術の組み合わせを考える
- ユーザーが「求めていないもの」を見極める勇気を持つ
- アイデアは異業種・異分野の知識を組み合わせたときに生まれる
横井軍平の言葉にある「いろいろアイデアというものは出てくる」に勇気づけられます。
つまり「枯れた技術の水平思考」とは、アイデアを見つけるための一つの方法論だと評価して良いのです。
おわりに
結局のところ、何を作りたいかと、どう作るかは別物です。
プログラミング言語を知らなくても、「これを作ったら絶対に喜ばれる」と分かれば前に進める。
本当に必要なものを理解するとは、同時に「不要なもの」を理解することでもあります。
横井軍平とヤングの共通項は、まさに水平思考の力。
異業種の知識や人との出会いが、次の大きなアイデアにつながるのだと思います。
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