はじめに:評価の狭間で揺れる営業マンの本音
「今月も目標未達で上司からの評価が厳しい…」
「自分がやりたい新規開拓より既存顧客の維持ばかり求められる…」
「会社の方向性と自分のキャリアプランが合わない気がする…」
こんな悩みを抱える営業マンは少なくないでしょう。筆者も、かつては同じ悩みを抱えていました。
営業という仕事は数字で評価される世界です。しかし、私たちの中には「この市場にはもっと可能性がある」「この新しい提案方法を試したい」など、数字以外の部分でチャレンジしたい気持ちがあるものです。
今日は、「評価されること」と「やりたいことをすること」のジレンマについて、筆者の失敗経験も踏まえながらお話ししていきます。
営業マンが陥りやすい「評価と自己実現」の罠
まず、多くの営業マンが陥る典型的なパターンを見てみましょう。
段階 | 行動パターン | 結果 |
第1段階 | 自分のやりたい提案や施策を優先する | 会社の評価軸と合わず低評価 |
第2段階 | 低評価に落胆し、モチベーション低下 | パフォーマンス全体が下がる |
第3段階 | 自分の価値を認めてもらえないと感じる | 会社や上司への不満が増大 |
第4段階 | 転職や部署異動を考え始める | キャリアの中断リスク |
この悪循環、どこかで経験したことはありませんか?
筆者も入社3年目、新規事業のアイデアに夢中になるあまり、本来の営業目標を達成できずに厳しい評価を受けた経験があります。当時は「会社は私の可能性を理解していない」と感じていましたが、今思えばそれは大きな勘違いでした。
成功への正しいステップ:評価軸を最優先する理由
ここで重要なのは、順序です。
私たちがやりたいことを会社で実現するためには、まず「信用」という通貨が必要です。その信用を得るための最短ルートが、会社の評価軸に沿ったパフォーマンスを出すことなのです。
「評価を得てから挑戦する」のが正解であり、「挑戦してから評価を期待する」のは順序が逆なのです。
正しいアプローチを図式化すると、次のようになります
STEP |
4.大きな裁量と自由の獲得 |
3.自分のアイデア実現 |
2.信用・評価の蓄積 |
1.会社の評価軸の理解・達成 |
実践ステップ:評価軸を理解し、信用を勝ち取るには
STEP 1: 評価軸を明確にする
まずは、あなたの会社や上司があなたに何を求めているのかを明確にしましょう。
🔍 チェックリスト: 自社の評価軸を把握する
- □ 公式の評価項目や目標を確認している
- □ 上司が非公式に重視している点を把握している
- □ 評価面談などで具体的な期待値を聞いている
- □ 高評価を受けている先輩の行動を観察している
- □ 会社の経営方針と自分の役割の関連を理解している
上司に直接「どうすれば評価してもらえますか?」と聞くのも効果的です。意外にもシンプルな答えが返ってくることが多いものです。
STEP 2: 評価軸で結果を出す集中期間を設ける
評価軸に合わせて、短期的な成果を上げることに集中しましょう。ここがポイントです。この時期は自分のやりたいことよりも、会社から求められていることを優先します。
評価項目の例具体的な行動例売上目標達成確実に成約できる商談に注力顧客満足度既存顧客のフォロー徹底チーム貢献部内情報共有、後輩指導業務効率化報告の質と速度を上げる
STEP 3: 評価前に上司と認識合わせをする
評価時期が近づいてきたら、上司と「どこまでできていて、何が足りていないか」の認識合わせをしましょう。
上司との1on1ミーティングでの効果的な質問例:
- 「○○の目標に対して、現在の進捗をどう評価されていますか?」
- 「残りの期間で特に注力すべき点はどこだと思われますか?」
- 「次の評価に向けて改善すべき点を教えていただけますか?」
この対話は、評価の認識を改め、残りの期間で挽回できる機会を作ります。
評価を勝ち取った後の「自己実現フェーズ」へ
評価サイクルで一定の信用を獲得したら、いよいよ自分のやりたいことにチャレンジするフェーズです。
ここでも戦略的なアプローチが必要です:
①小さく始めて成功事例を作る
まずは本業の傍らで小規模に始め、成功事例を作りましょう。「実績」という形で見せることが重要です。
②数字で語る習慣をつける
あなたの新しい取り組みを、会社の評価軸(=多くの場合は数字)に紐づけて説明できるようにしましょう。
【良い提案例】
「この新規アプローチでテスト的に取り組んだ3件のうち2件が成約し、
従来の方法より30%高い単価を実現できました。チーム全体で実施すれば、
月間で約○○○万円の売上増が見込めます」
③同盟者を増やす
上司だけでなく、他の部署や経営層にも理解者を増やしていくことで、あなたのアイデアの実現可能性が高まります。
失敗から学んだこと:筆者の体験談
冒頭でも少し触れましたが、筆者は「順番を間違えてしまった」経験があります。
入社して成績が良かった時期に調子に乗り、会社の評価軸を軽視して自分がやりたいプロジェクトに力を入れすぎた結果、業績が落ち込み信頼を失いました。その後、評価軸に立ち返り基本に忠実に取り組んで信頼回復に努めた結果、今では自分の提案も受け入れられるようになりました。
この経験から学んだ重要なポイント:
評価軸を無視して自己実現を急ぐと、結果的に両方を失うことになる。
まとめ:賢い営業マンの優先順位
営業マンとして成功し、かつ自己実現も達成するための優先順位をまとめます:
- 会社の評価軸を理解し、それに沿った成果を出す
- 上司との定期的なコミュニケーションで期待値を調整する
- 評価と信用を勝ち取ってから、自分のアイデアを提案する
- 小さな成功事例を積み重ね、段階的に裁量を拡大していく
これらのステップを踏むことで、「会社で評価される」と「自分のやりたいことをする」という一見相反する目標を、順序立てて達成することができるのです。
あなたも今、評価と自己実現の狭間で悩んでいるなら、まずは評価軸に立ち返り、信用獲得を最優先にしてみてはいかがでしょうか。
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